【ASD版】障害年金|診断書・申立書で「社会での困難さ」を伝える方法【例文・チェックリスト付】

はじめに

「相手の言っていることの裏が読めず、いつも誤解されてしまう…」
「急な予定変更があると、頭が真っ白になって何もできなくなる…」
「特定の音や光がどうしても苦手で、職場にいるだけで疲弊してしまう…」

ASD(自閉スペクトラム症)の特性によって生じるこれらの困難は、あなたの「努力不足」や「わがまま」が原因ではありません。困難の程度によっては、障害年金という公的な経済支援を受けられる可能性があります。

この記事では、精神疾患専門の社会保険労務士が、申請の最も重要なカギとなる「診断書」「病歴・就労状況等申立書」について、ASD特有の困難さを審査担当者に正しく伝えるための書き方を、具体的な例文とチェックリストで解説します。

【大前提】障害年金を受け取るための3つの基本要件

  • 初診日の要件:
    障害の原因となった症状で初めて医療機関を受診した「初診日」に、国民年金または厚生年金に加入していること。
  • 保険料納付の要件:
    初診日の前までに、年金保険料を一定期間納めていること。
  • 障害状態の要件:
    障害の程度が、国の定める等級に該当していること。

最初に知ってほしいこと:審査は「病名」ではなく「社会で適応する上での困りごと」で決まる

最も大切なのは、ASDという特性だけで審査されるわけではないという点です。重視されるのは、ASDの特性によって日常生活や仕事にどれくらいの支障(制限)が出ているかという実態です。

ASDでは、次のような「社会で適応する上での困難さ」が評価の中心になりやすい傾向があります。

  • 社会的コミュニケーション:相手の意図や暗黙のルールの理解が難しい
  • 変化への対応:急な予定・手順変更で著しい混乱や不安が生じる
  • 感覚過敏:音・光・匂い・触覚などが過敏で、特定の環境に居続けるのが困難
  • こだわり・同一性の保持:決まった手順でないと作業が進まず、変更で停止してしまう
  • 安全の確保:パニックやメルトダウン時に見守りや支援が必要になることがある

申請の第一歩は、ご自身の「困りごと」をこれらの観点で具体的に“見える化”することから始まります。

【重要ステップ1】診断書の準備(ASD特有のチェックリスト&例文)

診断書は、医師があなたの困難さを第三者に客観的に伝えるための書類です。短い診察でも実態がしっかり反映されるよう、事前準備が成功の鍵を握ります。

診断書依頼前・準備チェックリスト(ASD版)

このチェックリストは、短時間の診察でも実態が診断書に反映されるように、事前に「場面 × 困難 × 支援の要否 × 頻度 × 結果 × 客観資料」を整理するためのメモです。
診断名そのものではなく、日常生活で何がどの程度できず、どの支援が恒常的に必要かを具体例で用意しておくと、医師が診断書(精神の障害用)の該当欄(「日常生活能力の判定/程度」等)に落とし込みやすくなります。

  • 一番困っていることを3つに絞ったか(例:対人関係の困難/予定変更への弱さ/感覚過敏)
  • 具体的な場面と頻度を書き出したか(例:朝礼・会議・満員電車/週◯回・月◯回)
  • 必要な支援・配慮を明記したか(例:同席者のフォロー、静かな席、予定の事前共有)
  • 困難が起きた結果(欠勤・早退・業務停止など)を記録したか
  • 客観的な資料(職場の配慮メール、工程メモ 等)を準備したか

医師への伝え方(診断書に反映させたい要素の例文)

ここに挙げる例は、医師が診断書へ転記しやすい「観察可能な事実+頻度+支援の必要性+結果」の形に整えています。
病名や気持ちだけでなく、どの場面で何ができず、恒常的にどんな支援が要るのかを端的に伝えましょう。診断書の記載は医師の医学的判断で決まるため、表現の強要は避け、事実メモを共有するスタイルがおすすめです。

  • 社会的コミュニケーション:
    「相手の指示の意図を正確に読み取れず、週2〜3回業務に抜け漏れが生じます。同僚に指示を文字で書き出してもらい、一つ一つ確認する支援を受けています。」
  • 予定変更への対応:
    「朝礼で急なシフト変更を告げられると混乱し、月2回出勤できません。手順変更がある際は、事前に上司の同席が必要です。」
  • 感覚過敏:
    「オフィスの蛍光灯と複合機の音が苦痛で集中できません。ノイズキャンセリングヘッドホンの着用と静かな席への移動を常時お願いしています。」
  • 感情表現・孤立感:
    「気持ちをうまく言語化できず、周囲に溶け込めません。ストレスが蓄積し、気分の落ち込みが続きます。」

【重要ステップ2】申立書の書き方(最強フレームワークで具体化)

「病歴・就労状況等申立書」は、診断書の内容をあなたの言葉で「翻訳」し、具体性を補強する書類です。ASDの困難さを伝えるには、次のフレームワークが有効です。

最強フレームワーク:場面 × 必要な支援 × 頻度 × 結果 × 資料

【場面】朝礼で、口頭の曖昧な指示が理解できない

【必要な支援】同僚が指示をタスクリストとしてメモ化し、工程を一緒に確認

【頻度】週に3回発生

【結果】作業ミスと遅延が続き、より単純な軽作業へ配置転換

【資料】上司からの注意メール、作業工程メモ、勤怠記録、配置転換の辞令

ASDの障害年金でよくある質問(FAQ)

Q. 発達障害は生まれつきですが、初診日はいつになりますか?

A. 制度上の「初診日」は、障害の原因となった症状について初めて医師の診察を受けた日です。成人後に困難さへ気づき受診した場合は、その受診日が初診日となります。

Q. 働いていると受給は難しいですか?

まとめ:あなたの「困難さ」を可視化することから始めよう

ASDの困難さは目に見えにくく、周囲に伝わりにくいものです。だからこそ、申請書類では「どの場面で」「どんな支援が必要で」「その結果どうなっているか」を具体的に可視化することが何より重要です。

この記事のチェックリストやフレームワークを参考に、まずはご自身の状況を整理してみてください。ひとりで抱え込まず、必要なときは専門家を頼ることも検討しましょう。