【知的障害】障害年金の認定ポイント|IQの数値や就労だけで諦めないための「実務的」な伝え方

家族が子どもの手をつないで支援している様子(イメージ)

「IQが50以上あるから、2級は無理だと役所で言われた」 「子供は障害者雇用で働いているから、年金はもらえないと思い込んでいた」

弊所に相談される親御様の多くが、このような誤解をされ、申請を諦めかけています。確かに、国の障害認定基準には知的障害の判定の考え方が示されています。しかし、障害年金の審査実務においてIQの数値はあくまで「一つの目安」に過ぎません。

最も重視されるのは、「数値」そのものではなく、「その数値によって、日常生活や仕事の現場で、具体的にどれだけ制限が生じているか」という実態です。この記事では、制度の一般的な説明は必要最小限にとどめ、実際の請求現場で重要になる審査のポイントを、社労士の実務経験を踏まえて解説します。

知的障害の審査では、IQの数値だけでなく日常生活上の援助の必要度が重視される

知的障害の認定審査において、ご家族が一番気にされるのが「IQ(知能指数)」や「療育手帳の等級」です。しかし、「IQが高い=不支給」という単純な計算式は、実務では通用しません。

IQの数値と実態の「乖離」をどう伝えるか

知的障害ではIQだけで判断されるのではなく、日常生活における援助の必要度なども踏まえて総合的に認定されます。

  • IQ63(軽度)でも2級に該当し得る:
    数値上は軽度とされる場合でも、対人スキルや判断力に大きな困難があり、日常生活のほぼ全てに家族の声かけや介助が必要であれば、2級に該当し得ます。

私が以前サポートしたIQ63の方は、一見すると普通に会話ができそうに見えましたが、いざ年金のヒアリングを始めると、質問に対する答えが見当違いな方向へ返ってきてしまい、意思疎通に大変苦労しました。 短時間のアルバイトをしていましたが、店長に怒られることが続き、抑うつ状態に。自尊心は低下し、日常生活も回らず、お母様の全面的な援助がなければ生活が成立しない状態でした。

就労していても受給できる? 就労状況はどう見られるか

「働いていると障害年金はもらえない」というのも非常に多い誤解です。知的障害のある方の多くは何らかの形で就労されていますが、働いているという事実だけで直ちに不支給になるわけではありません。

審査では、就労の有無だけでなく、その働き方や職場で受けている配慮の内容も見られます。ただ働けているのではなく、どのような援助や支援を受けながら成り立っているのかを具体的に伝えることが大切です。

「社会の壁」にぶつかった事実は、能力の制限を裏付ける

審査では、就労しているかどうかだけでなく、どのような配慮や援助を受けながら働いているのかも見られます。
「働きたい」「学びたい」という意欲があっても、特性ゆえに社会の壁にぶつかってしまった経験は、本人の日常生活能力を客観的に示す重要な情報になります。

例えば、あるIQ67の方は「介護福祉士」を目指して専門学校へ進学されました。しかし、「複雑な座学が理解できない」「実習現場で状況に合わせた臨機応変な判断ができない」といった具体的な困難に直面し、結果として退学を余儀なくされました。

こうしたエピソードは、単なる「学業不振」ではなく、「指示の理解」や「社会性」において、日常生活能力が著しく制限されている実態を医師や審査側に伝えるための、切実な事実(エビデンス)となります。

【重要】医師の診断書を「実態通り」に書いてもらうために

知的障害の申請における最大の難関は「診断書の作成」です。診察場面だけでは、家庭や職場での実際の困りごとが十分に伝わらないことがあります。

知的障害の方は、診察室では緊張しておとなしくしていたり、医師の質問に(分かっていないのに)「はい、大丈夫です」と答えてしまったりすることがよくあります。その結果、実態より軽い診断書が書かれ、不支給になるケースが後を絶ちません。

社労士が作成する「参考資料」の役割

私たち社労士がサポートする場合、医師に以下のような実態を可視化した資料をお渡ししています。

  • 食事: 親が献立・調理・配膳のすべてをやっている。
  • 金銭: 管理ができず、お小遣い制にしている。
  • 清潔: 入浴や着替えに毎日声掛けが必要。
  • 社会性: 過去に起こした具体的な対人トラブルの内容。

これらを医師に伝えることで、初めて診察室の外の「本当の姿」が反映された診断書が完成します。

20歳前傷病(生まれつきの障害)の特有の注意点

知的障害は、20歳前傷病による障害基礎年金の対象となることが多く、20歳到達時点で障害等級に該当していれば請求できます。
20歳時点で請求する場合は、原則として20歳到達日前後3か月以内の状態を記載した診断書を用います。
もっとも、請求自体は障害認定日以後いつでも可能です。ただし、遡って受けられる年金には時効があり、5年分が上限となるため、早めに準備しておくことが大切です。
また、20歳前傷病による障害基礎年金には所得による支給制限があり、前年所得によっては支給停止となることがあります。

なお、先天性の知的障害では、出生日が初診日として扱われます。
そのため、通常の傷病のように「最初に受診した病院で受診状況等証明書を取る」という流れにならないことが多く、先天性の知的障害であれば、受診状況等証明書は不要です。
もっとも、頭部外傷や高熱など、後天的な事情が原因で知的障害の状態となった場合は、初診日の考え方が異なることがあります。

最後に:将来のために「今」できること

知的障害の障害年金は、お子様が将来、親亡き後も安心して暮らしていくための大切な「命綱」です。

「うちは軽度だから」「働いているから」「役所で難しいと言われたから」と諦めてしまう前に、一度専門家の意見を聞いてみませんか?

障害年金の審査は、書類の書き方一つ、医師への伝え方一つで結果が変わります。弊所では、「IQの数値」だけでは測れない、ご本人の本当の「生活実態」を書類に落とし込み、受給に向けて全力でサポートいたします。