障害年金の診断書|精神疾患の辛さを医師に正しく伝えるための重要ポイント

しかし、多くの患者さんが、 「診察の時は緊張して、伝えたいことの半分も言えなかった…」 「たまたま調子が良い時に診察があり、軽い症状だと思われていないか心配…」 「自分の辛さをうまく言葉にできず、先生にきちんと伝わっているか不安…」 といった、切実な悩みを抱えています

精神疾患の症状は、外からは見えにくく、ご本人にしか分からない辛さが数多くあります。だからこそ、実態に即した適切な診断書を書いてもらうためには、患者さん側にも少しの準備と工夫が不可欠です。

この記事では、あなたの日常生活における困難さを医師に正確に伝え、適切な診断書を作成してもらうための3つの重要なコツを、専門家の視点から具体的に解説します。

コツ1:最重要原則「もし一人暮らしだったら?」を前提に伝える

精神障害用の診断書には、「日常生活能力の判定」という、審査において極めて重要な項目があります 。これは7つの場面において、ご自身の能力がどの程度かを医師が評価するものですが、ここには絶対に知っておくべき大原則があります。

それは、「単身で生活するとしたら可能かどうか」という仮定で判断される、という点です 。

たとえご家族のサポートがあって何とか生活できていても、審査で見られるのは「援助がない状態で、自発的にできるか」です。この視点を踏まえ、「何が、どの程度できないのか」「誰かの、どのような助けがあって初めてできるのか」を具体的に伝えることが、実態に合った診断書への第一歩です。

以下の具体例を参考に、ご自身の状況を整理してみましょう。

① 適切な食事

伝えるべきポイント: 栄養バランスや献立を考え、調理や片付けまでを一人でできますか?

  • 良くない伝え方: 「家族が作ってくれるので、食事は摂れています。」
  • 良い伝え方: 「現在は家族が3食用意してくれるので何とか食べていますが、もし一人暮らしであれば、献立を考えたり調理したりする気力が全く湧かず、一日中何も食べずに過ごしてしまうと思います。そもそも食欲がなく、何を食べても味がしません。」

② 身辺の清潔保持

伝えるべきポイント: 入浴や着替え、部屋の掃除などを自発的に、適切な頻度で行えますか?

  • 良くない伝え方: 「お風呂には入っています。」
  • 良い伝え方: 「週に1回、親が来て掃除をしてくれますが、それ以外の日は部屋にゴミが溜まり続けます。入浴は家族に何度も促されてようやく入れる状態で、もし一人暮らしであれば、何週間も入れないと思います。着替える気力もなく、3日間同じ服を着てしまうこともあります。」

③ 金銭管理と買い物

伝えるべきポイント: 計画的にお金を管理し、一人で必要なものを買うことができますか?

  • 良くない伝え方: 「買い物には行けます。」
  • 良い伝え方: 「金銭管理は自分では全くできず、家族に全て任せています。もし一人で買い物に行かなければならない場合、何が必要かを判断できず、結局何も買えずに帰ってくるか、不安から不要なものを大量に買い込んでしまいます。」

④ 通院と服薬

伝えるべきポイント: 一人での通院や、処方された薬の管理はできていますか?

  • 良くない伝え方: 「薬は飲んでいます。」
  • 良い伝え方: 「現在は家族に管理してもらっていますが、もし一人であれば、薬を飲むこと自体を忘れてしまいます。週に3~4回は飲み忘れ、飲んだかどうかが分からなくなり、二重に飲んでしまうこともあります。次回の予約日も覚えられません。」

⑤ 他人との意思伝達・対人関係

伝えるべきポイント: 家族以外の人とのコミュニケーションは円滑にできますか?

  • 良くない伝え方: 「あまり人と話しません。」
  • 良い伝え方: 「家族とは最低限の会話はできますが、それ以外の人と話すことは極度の苦痛です。電話が鳴っても出られず、友人からの連絡も全て無視してしまっているため、社会的に孤立しています。」

⑥ 身辺の安全保持・危機対応

伝えるべきポイント: 危険を察知し、安全に行動したり、予期せぬ事態に対応したりできますか?

  • 良くない伝え方: 「時々、危ないことがあります。」
  • 良い伝え方: 「注意力が散漫で、調理中に火を消し忘れることが月に数回あります。また、もし一人でいる時に地震などの予期せぬ事態が起きると、頭が真っ白になり、安全確保の行動が全く取れなくなってしまいます。」

⑦ 社会性

伝えるべきポイント: 社会生活に必要な手続きなどを、一人で行うことができますか?

  • 良くない伝え方: 「役所の手続きは苦手です。」
  • 良い伝え方: 「市役所や銀行などでの手続きが、説明を読んでも理解できなかったり、必要なものを準備したりすることができず、一人では行えません。常に家族の付き添いが不可欠です。」

コツ2:伝えたいことは「診断書に沿ったメモ」で渡す

診察時間は限られています。コツ1で挙げたような多くのことを、緊張や症状がある中で口頭で完璧に伝えるのは至難の業です。

そこで最も効果的なのが、事前に伝えたいことをメモに書き出し、診察の際に医師に渡すという方法です 。

メモ作成のポイント

  • 診断書の項目に沿って書く: メモの冒頭に「診断書⑩ウ2 日常生活能力の判定について」と見出しをつけ、「①食事について」「②清潔について」のように診断書の項目に合わせて具体的なエピソードを箇条書きにすると、医師が診断書のどこに書けばよいか分かりやすくなります 。
  • 家族や周りの人からの視点を加える: 「夫から『最近、返事があっても上の空のことが多い』と言われる」「親が週に一度、部屋の掃除に来てくれている」など、第三者から見たあなたの様子や、受けている援助について書くと、客観性が増します 。
  • 就労している場合: 「仕事中、集中力が続かずミスが多い」「電話対応が困難で、他の人に代わってもらっている」など、職場からどのような配慮を受けているか、仕事にどのような支障が出ているかを具体的に書きましょう 。

メモを渡すことで、あなたの状況がより正確に、かつ客観的に医師に伝わり、診断書作成の際の貴重な資料となります。

コツ3:症状の波を「定量化」して伝える

精神疾患の症状には波があります。たまたま診察の日に調子が良くても、それがあなたの普段の平均的な状態ではありません。むしろ、一番調子が悪かった時の状態を基準に、日常生活の困難さを伝えるようにしましょう。

その際、症状の波を具体的に「定量化」することが重要です。

  • 良くない伝え方: 「調子の悪い日が多いです。」
  • 良い伝え方: 「今日は調子が良いので会話もできますが、月に20日ほどはベッドから起き上がれません。調子の悪い時は、お風呂に入ることも食事を摂ることもできません。」

具体的な日数で伝えることで、症状の重さがより客観的に伝わり、審査において説得力のある情報となります 。

ここまで、医師に症状を正しく伝え、実態に即した診断書を作成してもらうための3つのコツを解説してきました。

【専門家の視点】当事務所は「医師への情報提供書」で強力にサポートします

ここまでご自身でできる3つのコツをお伝えしましたが、「自分だけでこれら全てを整理して、医師に的確に伝えるのは難しい」と感じる方も少なくないでしょう。

私は、ご依頼者様から上記のような日常生活のご様子を丁寧にヒアリングし、その内容を基に、医師に診断書作成の参考にしていただくための「情報提供書」を作成しています。

これは、障害年金の専門家である社会保険労務士と、精神保健福祉の専門家である精神保健福祉士のWライセンスを持っているからこそできる、受給の可能性を最大限に高めるための重要なサポートです 。

私が作成する情報提供書は、単なる日常状況のまとめではありません。

  • 社会保険労務士として、年金審査で重視される法的・制度的ポイントを的確に押さえます。
  • 精神保健福祉士として、ご本人の生活上の困難さを医学的・福祉的観点から具体的に言語化します。

この二つの専門性を一つの書類に統合することで、医師の診断書作成の負担を軽減し、ご本人の状態が最も正しく伝わるよう橋渡しをします。これこそが、Wライセンスがもたらす最大の価値です。

診断書のことで悩んだら、決して一人で抱え込まないでください。私が、あなたと医師との大切な橋渡し役となります。ぜひ一度、お気軽にご相談ください。